かつてWebサイト制作と言えばPCサイト制作そのものを指し、ケータイサイトやスマホサイトはそのオプションでした。やがてPC、タブレット、スマホのそれぞれに対応するサイト制作が当たり前になり、現在ではスマホでの見え方、使い勝手を最優先させるのがスタンダードです。
閲覧端末の飛躍的な変化・進化
短命だった「ケータイサイト」賞賛時代
十数年前、Web業界ではケータイサイトの必要性を声高にうたっていました。当時、閲覧端末のなかでもケータイが占める割合が高まりつつある、という時代背景。しかもケータイサイトは新分野だったことも手伝って、絶対数が小さいため競合も少なく、検索エンジン対策も比較的容易でした。
業界関係者は口々に、「これからの時代はケータイサイトだ」「ケータイサイトでも高額商品が売れた」と語り、今後の業務の柱になることは間違いない、と信じ切っているかのようでした。
スマートデバイスの登場で……
しかし、それから程なく、Apple社のiPhoneが登場し、日本国内でも発売されました。ほぼ時を同じくしてタブレット端末iPadが登場します。間もなく各メーカー各キャリアからスマホ、タブレットが続々とリリースされ、いわゆるガラケーは新機種が追加されなくなりました。そこからのスマートデバイスが世に浸透する速度は今さら語るまでもありません。
プロまでもが信じて疑わなかった業界の潮流を、たった1台の新機種がガラッと変えてしまったのです。
そして、モバイルファースト時代へ
ITに関係したとあるセミナーでこんな質問がありました。
「パソコンもインターネットにつなぐことはできるのでしょうか?」
一部の参加者は失笑しました。しかし同時に焦燥感を禁じ得なかったのも少数ではありませんでした。業界人として危機感を突きつけられた瞬間でした。
それから間もない2016年10月17日、Googleからモバイルファーストインデックスが計画発表されました。
実際に、この計画発表から1年前の2015年、スマホからの検索数がPCからの検索数を上回ったので、当然の流れと言えるでしょう。
モバイルファーストインデックスについて
そもそもモバイルファーストインデックスとは
Googleに代表される検索エンジンはWeb上のページを巡回し、そのページ上の情報を収集・評価して検索結果順位を決定しています。
その評価基準をPCページではなくモバイルページにする、というのが「モバイルファーストインデックス(mobile first index、以下略称MFI)」です。
そして、Googleは検索結果をPCとモバイルと別々に出すのではなく、モバイルページの評価に基づいてPCとモバイルの双方に同じ検索結果を表示する、というものです。前述のように2016年10月17日に計画発表があり、約1年半後の2018年3月27日、本格導入されました。
モMFIが適用されると、そのドメインに適用された旨の通知がサーチコンソール宛に届きます。
MFIに対応できたサイトから移行し、2020年9月からは準備が整っていないサイトも含め全サイトを移行させるとGoogleは明言しています。
これから必要なこと
まず、モバイル対応は最低限必要です。逆に考えれば、モバイルサイトがあればPCサイトは無くても良い、極端かも知れませんが、重要度から考えれば、そういうことです。
モバイルサイトは存在するが、PCサイトのダイジェスト版である、というケースもまだまだ見受けられます。前述の「モMFIへの準備が整っていない」サイトです。おそらくこの場合、PCサイトとは別にモバイルサイトが存在する状態と思われます。PCサイトに重きを置き、コンテンツも充実しているのであれば、PCサイトをそのままレスポンシブデザインに構築し直すことで解決できます。
また、特に新規制作あるいは根本的なリニューアルをする場合特に気をつけていただきたいことがあります。それは、 コンテンツについてもページの構成についても考え直さなければならない、ということです。
たとえば、回線速度が十分でない場合を考慮しているか。
ページを華やかに見せるためだけのイメージ写真は表示スピードを遅くさせる原因になります。また、必要性がある画像であっても、Retina画面を意識した高解像度画像をふんだんに使用した場合も同様です。
また、二つの内容があったとして、これらを別々のページに分けて制作し、リンクでページ推移させるのか、同じページ内に納めてスクロールさせて見せるのか。PCサイトだけを考えれば、当然前者でしたが、モバイルファーストを考えると、答えは一つではなくなります。.モバイルユーザーは必ずしもWi-Fi環境下にいるとは限りません。その上、スワイプしてひたすらページの下方へスクロールしていくことは苦にしないものの、リンクを辿ってページを推移していくことにはストレスを感じる傾向があります。相反する条件や状況にどう対応していくべきなのか、よく考えて判断しなければなりません。
「業態がB2Bだから閲覧者の殆どがPC利用者だ」というお話もよく耳にします。しかし、その企業が何らかの検討の1社となり、会議や議論の中で社名が出てきた時に、必ずしもその場の全員がPCを開いているとは限りません。また、閲覧者の殆どがPCユーザーであったとしても、Googleはモバイルページをインデックス、評価するわけですから、SEO対策的にも不利になります。
まとめ
情報発信の仕方や、一つのページの中でどこまで見せる・語るか、など、SEO対策も考慮しつつも、モバイルユーザーにとっていかに使いやすいページ・サイトにするか、を最も念頭に置くことこそが、モバイルファーストではないでしょうか。